スポルティバ セオリー
過去にソリューションコンプに関する記事を書きましたが、同じく新しいハイエンドであるセオリーを履き込んだのでレビューを少々。
発売からたいがい経ってますので大体なことはご存知だと思いますが、スポルティバのハイエンドソフトシューズです。柔らかくて一本締めで、トゥがかかるっていう凄い流行りを詰め込んだ王道の現代的なシューズだと思います。
足形はストレート。自分は薬指が長く、ターンインのシューズが履けないので、嬉しい。
ヒールは細身で、フィット感が高く、謎の黄色いゴムもそんなに滑らないので、ヒールカップとしては非常に優秀な部類に入るかと思います。シューズ全体の剛性が低いので、ヒール剛性が担保されないので、ヒール性能がめちゃくちゃ高いわけでは無いですが、この手のシューズの中ではかなり良い方。
また、トゥラバーがベルクロ近くまであり、(結構重要。ベルクロ近くまで深く掛けることが多い。意外とラバーが短い靴が多い。)凄く薄い上に滑らないラバーなため、トゥ性能はめちゃくちゃ高いと思います。
サイドはラバーが巻き込んで上まできており、ノーエッジのようになってます。側面でボテに乗る時に良いらしいですが、ラバーが剥離してくることを防止できるので良いと思いました。
サイズ感
基本的にスポルティバの他のシューズと同じで良いかと思います。スクワマは幅が広いので、それよりはハーフ上げでも良いかもです。
自分は実寸25.5cmほどでEUR39を履いてました。スクワマも39でしたがスクワマはもうハーフ下でも良いくらいのような気がします。
ソリューションコンプは38.5。これには少し理由があります。コンプは結構硬い靴なので、エッジ性能とヒール性能を上げるために少し詰めています。もちろんヒールは特に体重がかかる場合、サイズは小さい方が安定感が高くなります。エッジは言わずもがな。
ところが、ソフトシューズに関しては自分はそこまで攻めなくて良いのかなと。例えばトゥフックは、ダウントゥと反対側に(甲側に)反らした方がかかります。これはサイズが小さいと、ダウントゥの形をした靴の形に拘束されてしまうため、甲側に反らしにくくなります。
スメアも、あまりに攻めすぎているとベタッと乗りにくくなります。
ヒール性能⇆トゥ性能
エッジング⇄スメアリング
この辺りは基本的に二律背反だと思ってくれて構いません。例外はあります。
長くなりましたが、セオリーは攻めすぎない、ハーフ緩めくらいで良いです。本気ミウラーよりは1upくらいでも良いかもです。
持病
内側のトゥラバー(親指の付け根くらい)がピンポイントで剥がれてきます。これは完璧に持病かと思います。新品のうちにシューズドクター等で補強しとくのが吉です。
ヒールラバー。これも仕方ない。なるたけ踵を潰さないように履いた方が良いです。
このようになったら補修はダイアボンドがおすすめです。
弱点
フック性能が高く、ハイエンドで現代的なソフトシューズであるセオリー。スポルティバの本気度合いがかなり感じられるシューズですが、個人的に致命的とも言える弱点が一つあります。トゥボックスです。以下はソリューションコンプとの比較です。
トゥボックスの厚み自体はそこまで変わらないですが、問題はつま先からの立ち上がりの角度。
セオリーはつま先から急角度で立ち上がっています。これは三つのシチュエーションで致命的な欠点となります。それは
- リーチギリギリで足を残したい時
- ポケットのようなホールドに乗る時
- 強傾斜、特にルーフくらいの角度
です。一つ目は割と想像がつくと思います。リーチギリギリの時は少しつま先立ちのように伸び上がることが多いですが、その時にシューズに角度がつくと、トゥボックスが壁に当たっててこの原理のように足が切れやすくなります。
二つ目も自明。入らないし、出てくるし。
三つ目は本当に使い込んで感じるのですが、ルーフでは、スタンスへの乗り方が変わります。
垂壁に近いと、体には重量(質量×重力加速度)がかかりますが、それは体に対して頭から足の方向にかかるため、足にまっすぐに(?)体重が乗ります。ソールのゴムのフリクションは圧力がかかると大きくなるため、体重を乗せたら十分にグリップします。
ところがルーフでは、体が水平になって背中から引っ張られるように重力がかかります。そうすると、足に体重が乗らないので、ソールのグリップを生かせずにスリップします。ルーフでは、体幹の力で積極的にスタンスに足を押し当てる必要があります。
話がそれましたが、ルーフでは体が基本的に前に出てくる方向に動くので、つま先で伸び上がる時と同じ現象になります。つまり、ダウントゥしていてトゥボックスが厚いと、踵をさらに奥に動かす必要があり、更なる体感が必要になります。
同様の理由で自分はルーフでは、スタンスの形状によってはダウントゥは大きなデメリットになると考えています。
ちなみに、つま先を薄く作る必要があるクラッククライミング用のシューズであるTCプロとの比較です。一目瞭然、かなりの違いがあります。
まとめ
さて、セオリーですが、基本的に非常に戦闘力が高く、現代の完成警に近いシューズだと感じました。ただ、カタログスペックでは分からない、使い込んでみてわかる事もありました。
今回言った欠点は、些細な事です。しかし、限界グレードにトライしている時に、何か一つでも、本当に小さな蟠りがあると、最後の最後で体の動きが僅かにぎこちなくなります。そのほんの僅かな差が是非を分ける事だってあります。
「もう10分レストした方が良かったか?」
「もう一回ブラッシングをした方が良かったか?」
「ちゃんと液チョーつけたほうが良かったか?」
「東京のブラックじゃなくてゴリラの方が良かったか?」
「セオリーで一回足切れたけど残るのか?」
そのちょっとの違和感が、全力を出し切る寸前で、気持ち悪いブレーキをかけるのです。
もちろん、気にならなければ大丈夫。一度気になってしまったら、それはもう終わりです。
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