厳冬期黒部横断・八ツ峰主稜
R.I.P. FK
respect for BMM
2023/12/23〜2024/01/02
富山起点のW氏、マル氏、ニシ
日向山ゲート〜扇沢〜岩小屋沢岳南尾根〜岩小屋沢岳北西尾根〜十字峡〜ガンドウ尾根〜仙人池〜三ノ窓雪渓〜八ツ峰IV稜〜八ツ峰主稜〜剱岳〜早月尾根〜馬場島〜伊折
12/23 『ファミマ』
日向山ゲート〜岩小屋沢南尾根2100m地点
6:30〜15:30
小雪
日向山ゲートでマルさんがポツリ
「すいません中間着忘れました」
斯くして北の大地が育てた鉄人マルさんは厳冬期黒部横断をファミマのインナー2枚重ねで凌ぐことになったのダ!
12/24 『後立山越え』
岩小屋沢南尾根2100m地点〜岩小屋沢岳山頂〜岩小屋沢岳北西尾根2150m地点
6:00〜13:00
晴れ、強風、夜雪
朝イチから全開空荷ラッセル。とはいっても天気はいいのでそこまでラッセルゾンビらない。
南尾根上部のアブナイ斜面は雪崩れるのを避けるために風に当てられた部分を登ったら、アイゼンの前爪しか入らない氷でふくらはぎを削られた。その直後に再び空荷ラッセルとなったが、今度はセカンドがズブズブ沈んで、トレースあるのに顔ラッセル。トホホ、、
やたらと風が強い後立山を越えて剱岳東面の山並みに感動したら下降。ロマンですねぇ。雪も降ってきたので早めにフィニ。テントでくつろいでたらチームどん底が追いついてきた。
12/25 『僕、これ見るために登山やってたんですね』
岩小屋沢岳北西尾根2150m地点〜1350m地点
6:30〜11:30
曇り、夜雪
晩に降った雪が思ったより積もってて、なかなか進まない。やっぱり今日の渡渉は無理そうだ。薮ズボの踏み抜きに苦労しながら1583mの標高点へ。
十字峡方面の展望は筆舌に尽くし難いものがあった。未踏の別山広河原側の尾根?いや壁??ヤバすぎるものが網膜に突き刺さる。
そこからの下降は寡雪の逆キノコ雪でありえんくらい悪かった。
12/26 『エスカレーター。手すりの方が微妙に遅い。』
岩小屋沢岳北西尾根1350m地点〜黒部川〜ガンドウ尾根1P目終了地点
6:30〜16:00
晴れ
再び雪と藪の(超)急斜面。半分滑落しながら進む。十字峡上流に至るルンゼを正確に見定めて2ピッチの懸垂で川床へ。この下降、めちゃ悪いやん、、
渡渉ポイントは、その先のルンゼ登攀も加味し、検討に検討を重ねた結果、検討することを検討し(き○だ構文)、セオリー(いや、ニッチすぎる!)より100mほど上流で。
渡渉は気持ち。準備が死ぬほど寒く、渡渉するときには全感覚が召されているので案外余裕。その後のルンゼは上部からの雪崩が相当怖かったけどなんとか水平歩道へ。
その後、マル氏と自分で明日のために残業。と、1ピッチ目が終わったところに馬鹿でかい台地を見つけ、急遽そこで爆営する事に。30kg近い荷物でユマールしたのち、マル氏と自分で再び2ピッチ目を登り返し、3ピッチ目までfixに行った。よく働いた。
12/27 『初めまして。よかったら郵便番号教えてもらえませんか?』
ガンドウ尾根1P目終了地点〜ガンドウ尾根1600m地点
6:00〜16:00
曇りのち小雪
昨日のfixを登り返し、さらにロープをのばす。あたりのルンゼを見つけてひたすらラッセル。左からの尾根に乗越したら剣沢大滝のI滝の威容が見えた。厳冬期のI滝を間近で見る日が来るとは、、
そこからはまさに”ネバーエンディング空荷ラッセル”。標高を上げるにつれ、キノコ雪が連続し、雪まみれの登攀。もちろん濡れる。そもそも昨日の時点で全身ずぶ濡れ。新品のシェルは浸水し、テント内に水溜りができるほど。ザックからは水が滴り、外に出せば30秒で凍りつく。スリングは鈍器か針金に状態変化し、アイゼンバンドは乾燥したワカメのよう。いや〜、黒部横断ですねぇ。
悪くなってきたところで天気も荒れ始め、空中になる懸垂が終わったところぐらいで寒さが限界に近づいてきた。ウエアを着込むタイミングを逃しかなり危なかった。
そこから3ピッチほどロープを出し、空荷ラッセルをしたところでようやく1600m付近の爆営可能地点まで到達。くたびれた、、
12/28 『ガンドウ尾根は終わッタ!!』
ガンドウ尾根1600m地点〜仙人池〜仙人山南尾根〜三ノ窓雪渓1660m地点
6:00〜16:30
晴れ
朝からロープを出し、懸垂を1発。明るくなってきたときに真横に見えるゴールデンピラーの威圧感がヤベェ、、その後も所々ロープを出しつつ時短しながら効率的に超える。
JPの手前でウンコが出たので快調快調。6連勤目の馬車馬空荷ラッセルをひたすらこなす。
途中、奇跡的に電波が入って天気情報を取得。2日目くらいから冗談半分に話していた計画外の八ツ峰突入がいよいよ現実問題として首をもたげる。
問われているのは、覚悟。腹をくくれるか。それだけ。やるしかない。やれる。
腹の底からゾッとするような恐怖を飼い慣らし、下降を開始した。
例えるなら嵐の時に安全な港で自らのもやいを解くような、そんな感覚。そう、Rのつくようなハードなトラッドクライミングで、レストポイントや最後のプロテクションから動き出すような感覚に似ている。
12/29 『セオリー無視』
三ノ窓雪渓1660m地点〜八ツ峰IV稜〜八ツ峰I,II峰間のコル
6:00〜18:00
ガスのち晴れ
八ツ峰IV稜の末端からはいかず、右のルンゼをひたすら詰める。途中、岩峰の下を巻く時にロープを出す。普通にシェルントに落ちかける。コルまでは視界も効かずまさにラッセルゾンビ。7連勤目でかなりキマってきた。
コルからは見事に晴れ渡り、異様な高揚感でロープを伸ばす。だが、行けども行けども近づかないI峰。悪い。てかややこしい。IV稜、めちゃくちゃガッツリ雪稜でした、、懸垂は2発くらい。
ひたすらリードとfixとラッセルを繰り返したら、I峰手前で夕焼け。
日没後にI峰から懸垂。月が出ておらず、ありえないくらい暗い。怖い。朝イチから全開で行動しており、暗さも相まってかなり消耗してしまった。
I・II峰間のコルで1時間以上かけて整地をし、風裏で幕営。
12/30 『月が綺麗ですね』
八ツ峰I,II峰間のコル〜八ツ峰主稜〜池ノ谷乗越
4:00〜18:30
晴れ
入山から8連勤目、前日残業からのAM2:00起床で八ツ峰の本体に取りかかる。厳冬期剱岳での本当の体力勝負が極まってきた。
ヘッデン行動の最中、I〜II峰間、II峰で懸垂を強いられる。寡雪のため、埋まっていれば楽勝なところもかなり難儀する。III峰辺りで夜明け。快晴のサンライズ八ツ峰主稜withフルムーンfeat.剱岳本峰
さながらシュールレアリズムの絵画のよう
贅沢すぎる。嫌でも気分が高揚する。俺はこの瞬間のために登山をやっていたんだ。
IV峰から1発。V峰から2発の懸垂。V・VIのコルから4ピッチ+ラッセルでVI峰。この頃から日射で雪が腐り、かなり沈むようになってきた、VI峰が遠すぎる!
VI峰からは懸垂。その後1ピッチ。疲れてきたのかラッセルして戻るときに雪を踏み抜いて10mほど落ちる。その後また懸垂。ひたすらラッセルでVII峰。水平に短く1ピッチのあと懸垂でVIII峰に至るコル。
八ツ峰は本当に最後まで手を抜かない。ここへきてVIII峰が一番傾斜が強く、ガッツリクライミング。3ピッチでVIII峰。そこからラスト1ピッチで八ツ峰の頭。間髪入れずに懸垂。
池の谷乗越に到達後、二つ玉をやり過ごす御殿イグルーの作成。俺はこの途中に尽き果てた、、すみません。
結局IV稜と主稜で30ピッチ近くロープ出し、10発以上懸垂した気がする
八ツ峰のTips?
1に天候、2に体力、3、4は無しで5に覚悟
12/31 『なんか、天井低くないっスカ?』
池ノ谷乗越
沈
多分吹雪
酸欠にビビりながら停滞。
ラジオの紅白であのちゃん聞いて幸せになって寝た
1/1 『生きて、、る?』
池ノ谷乗越(長次郎谷)
11:20行動開始〜沈
晴れ
詳細は後日
1/2 『核心は早月ダッ!』
池ノ谷乗越〜剱岳山頂〜馬場島〜伊折
6:30〜17:00
晴れ、烈風
明るくなってから、50mロープ2本を一杯一杯にしたコンテで北方稜線。もう、どんな些細なところも油断できない。やっぱり悪い頂稜をこなし、最大の懸念の長次郎のコルからの登り返しも経てついに本峰へ。風が強すぎて1分で退散。頂上から早月尾根の分岐までの50mが本山行で一番の核心だった。風速は常に30m/sに達しようとする強烈な南風。早月尾根最上部で懸垂一発。その後も嫌なところに雪が吹き溜まっており、ひたすらロープを出し続ける。その間、烈風。目は全く開けられない。一瞬で眼球が凍りそうになる。飛雪で、眼球をヤスリがけされてるんかと思った。
最大の懸念の獅子頭はなんとかなる。風は弱まらないが下るより他に方法はない。実は結構な死者を出してる早月尾根。際どいクライムダウンを延々と続ける。2500mを切っても風は治らず、蓄積の疲労と、烈風に晒され続けたせいでかなり消耗。特に体幹を喰われたらしく、バランスを崩して何度もこける。
真っ直ぐ歩くのもままならなくなってきた頃に早月小屋。食料食って回復。ここでミラーマン、ケースケさん、ごっくんからなるチームどん底と合流。週末山行の日曜日の晩のような爆速下山で一気に馬場島。
伊折では正月から富山登攀クラブの方々に迎えにきていただき、無事と成果を祝っていただいた。お汁粉までご馳走になり、ラーメン食って風呂入ってW氏の棲家でフィニ。
3.5kg痩せた
語録
揉みたいけど揉めない
リアルスプーン
お疲れ生でした
空焚き最高!空焚き最高!!
生還〇〇
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