抜戸岳南尾根

年末年始は抜戸岳南尾根へ。正直、結構山やってる人でも、は?どこやねん、、ってなりそうな山。それもそのはず直ぐ隣には有名な笠ヶ岳が居を構え、(実際、夏道の傘新道の前半は抜戸岳を登っている格好である。)東には大人気の槍穂高連峰と来た。良く、標高に似合わず刺激的な登攀を行えるという事を擦られがちな錫杖岳も、抜戸岳に比べればなんのその。スーパースターである。かの山の絶対的な魅力の大きさはさておき、立地を見ただけでも不遇と言わざるを得ない。かくして、我々のような泥臭(?)野郎に目を付けられる運びとなったのだ。

ちなみに今回は、5日間で抜戸岳南尾根と穴毛谷第二尾根を継続する計画だったが、0日目のひるがのSAの時点で4日間で南尾根を単体で狙うことになった。判断は正解。結局南尾根だけであっぷあっぷだった。

記録

Day0 2022,12/28

21:30合流

27:00就寝

直前にジフィーズの数が足りないことが発覚してモンベルに走るなんていうトラブルがあったりして結構バタバタに。更に近鉄が止まってs田さんとの合流に間に合わないことに。結局回って下さって事なきを得た。

このところ入山前のストレスが半端ない。この日の晩飯に食ったチーズ牛丼(書いたらなんか恥ずかし!)はあまりにも味がしなくて雑巾を食ってるようだった。生まれて初めて牛丼がまずいと感じた。

道中は久しぶりの再開に話が弾む。ひるがのでうーさんとカトさんに合流。新穂で車中泊。

Day1 12/29

7:30 起床

9:00 出発

10:45 南尾根末端(林道終点)

16:20 行動終了(1670mのコルで幕営)

少しゆっくり目に起きて、乗り合わせて登山口へ。新穂の登山者用駐車場に駐車して出発。林道部分にはトレースがあり、快適に歩く。一つ目に出てきた地図にない橋を渡る。ここからトレースがなくなり、腰ラッセルがスタート。ここから下山まで終始深雪に悩まされ続けることになる。

林道を越えて膝以上のラッセルが続く中、地獄の藪地帯へ。ここからはひたすら雪&藪。踏み抜き阿鼻地獄。本当に進まない。なかなかワンポイント悪いような箇所が続く。丸一日奮闘して、初日は林道末端から直線500m程しか進まなかった。しかも寝床は不十分で、苦しい夜に。この時点で、敗退を意識し始める。

Day2 12/30

5:30 起床

7:00 行動開始

13:20 2111mピーク

16:00 行動終了(ピークの先、2100m付近で幕営)

この日は朝イチでロープを出す箇所が。地味に険しい雪稜や、ザック有りではちょっときついみたいなところが連続する。正直複雑すぎて時系列が全く思い出せない。このあたりから、藪そのものを漕ぐことは無くなったものの、雪の下に埋まった藪が厄介な形で僕らを阻む。朝からアックスをショベルに持ち替え、ひたすらの空荷ラッセルを強いられ続ける。

空荷ラッセルで終始胸以上まで埋まる厳しい状況の中、キノコ雪の連続する一際厳しい雪稜に到達。先が見通せず、通過は不可能と判断。20m程下の斜面をトラバースしたがこれが極悪。足元から頭上高くまでの雪をショベルで落とし続け、足下が藪か岩か、はたまた空中かも全く分からない状態で足を出す。時間をかけてここを突破し、少し進んだところで幕営。昨日よりはかなりマシなキャンプ地となった。

この日はマストで進まなければいけない地点までは到達したが、2日間、終始天候は安定せず、依然苦しい。

Day3 12/31

5:00 起床

7:00 出発

9:30 南壁基部

14:15 南壁上部

14:45 行動終了(傘新道合流部付近でイグルー泊)

快晴。待ちに待った。

おかげで放射冷却からかシュラフとシュラフカバーの間が凍りついていた。俺の体温がありながら、、三日振りの太陽。全てが見渡せる。視界が開けるだけでこんなにも違うのか。相変わらずの厳しい空にラッセルだけど心は晴れやか。いつしか雪も締まり始め、先頭もようやくザックを背負って歩けるようになった頃、稜線の傾斜が落ちた。抜戸岳南壁。想像以上の異様がその全貌を見せる。

痩せた尾根をしばらく進んで懸垂。完全なバーチカル。というか藪のせいで若干空中懸垂気味。軽量化対策の亀甲縛り(スリングによる簡易ハーネス)では厳しい。

南壁基部から向かって左にトラバースを開始。ちゃんと悪い。4人いるマンパワーをフルに活かし、fixを活用しながら2pロープを伸ばす。その先はかなり切れ落ちていてなかなかハードな30mほどの懸垂。そこから当初予定していたルンゼを登攀するには荷物の重さと我々に残された時間や体力、気力からなかなかに厳しいものがあった。結局更に左上に50mトラバースし、そこから最後の嫌な藪まじりの雪壁を越すとようやく南壁が終了。2,30分ほどのラッセルで稜線に出た。

最後のピッチが終わってから天気が急速に崩れ、一気に吹雪に。傘新道との合流地点に着いた頃にはいつも通りの視界200m。大晦日の晩は狭いテントで泊まるのは嫌だということでイグルー泊を選択。その間にも天気が崩れ、顔が痛すぎて発狂するほどの猛吹雪へ。かなり難航しながらもなんとか完成して駆け込む。

完成したイグルーは若干お粗末で隙間風がすごい。おまけに雪が隙間から入り込んで足に積雪、、

なんとか塞げるところは塞ぐも3泊目でシュラフが濡れており、異常な寒さから過酷な夜となった。

Day4 1/1

5:30 起床

7:30 出発

9:30 林道

10:00 ホテルニューホタカ前

18:30 帰宅

あけおめ!あの絶望的曲がり具合の天井が落ちなかったことを見ると、2023は良い年になりそうだ!しかし外はホワイトアウト。もう我々にはそこからもう一度気合を入れ直して頂上に向かう元気は残されていなかった。2日から荒れる予報が早まり、1日午後には大荒れという予報も拍車をかけた。朝の時点で大概悪い。ほんで抜戸岳は2800m。北アのほぼ主稜線だ。リスクがデカすぎる。迷った挙句、無理はしないことにした。

下降は傘新道。いかにも雪崩そうな斜面を慎重にナビゲーションしながら下る。最後は一本南の沢に入って下降を完了。丸3日かけて獲得した標高差は、たかが2時間の脱出劇で回収。あっけないといえばそうかもしれない。晴れ晴れとした気分で林道を歩き、元気に新穂に凱旋。トイレの暖かさに驚愕しつつ、もう一台の車を回収し平湯の森へ。あんき屋ってとこで昼飯食って解散。s田さんとカトさんはアイスへ。僕とうーさんは帰京。毎度の如く取り止めもない話を繰り広げてたら一瞬で京都。なんと元日の親戚の集会に間に合った。いやはや、なんて激動な1日だろうか。

ギャラリー

初日。アプローチの時点でこの雪である
穴毛谷第一尾根の岩壁。いつか行きてえ。
藪に雪が載っていて、それを踏んでいくと雪が落ちて、気づいたら木登りをしている。ひどい空中戦だ。ちなみにこの枝は全て雪の下にあった。
こんな感じ。こういう奴は下の足元が空洞になってて埋まるのでほぼ前進不可。
初日の幕営地。進んでなさすぎて、まじ!?ってなって思わずスクショした。
2日目。朝イチから難所。リードのs田さん。
リッジも、積雪量も、天候も厳しい。
雪の量は終始こんなん。ちなみに下はnolona lofoten。上はワークマン。その定価の価格差なんと30倍!!!
秘技、ザック荷上げ。空荷で通過できないため。
こんなプチ難所が続く。躍動感ある写真。
一番視界がいい時くらい。
二日目は高度も上がり、積雪深も深くなり、終始空荷。それでも時にオーバーヘッド。
この日の核心。藪や岩のせいで雪が空中に積もっており、すごく消耗したリード。
こんな感じで藪の下はめちゃくちゃ埋まる。
3日目。登る稜線と目指す南壁。
快晴。明け。モルゲン。
早朝から気合の空荷胸ラッセル。
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かっこよ
これぞ冬山!な快晴とやっと空荷ラッセルから解放された先頭のオレ
傾斜が落ちて南壁と対峙。やはり雪が多い。
実は手を振ってるオレ
南壁までも気の抜けないリッジが続く。
霧がかる穂高
亀甲縛りで気合の懸垂byオレ。かっこよ
トラバース全体像
笠ヶ岳をバックにリードするうーさん。まじかっこよ。
30mのラッペル。スタックしそうだったので藪をノコギリで切り払う。開拓クライマーが一番得意なやつね。
3p目をリードするカトさん
のフォローとビレイするうーさん。
ようやく南壁を抜け、稜線を目指す。この辺りから急速に吹雪に。
4日目。これはきつい。
尋常じゃない曲がり方の天井。雪って弾性変形するんや、、
気の抜けない下降。
お疲れっした〜

反省

改善点

・準備じっくりしようぜ。

・冬靴(スカルパ、モンブランプロ)が6年モノで、足先の弱い私にはキツすぎる。早急に新調すべし。

・漏斗と茶漉しを忘れた。いかん。

・特にガスヘッドが個装なら、雪取り用のバールがいる。

・イグルー作りに手間取った、カトさんのヘルプがないとヤバかった。実戦は初だし、、

・アックスに雪がつきまくった。自己融着テープの範囲を広げ、油を塗る。

・雨蓋のベルトや各所ジッパーが使いにくい。斜めに切ったり、掴みやすいようにする。

・マカルーはやっぱり80でいいかな、、

・下半身のレイヤリングは改善の余地あり。

・ショベルの柄をなくした。いかん。

・ワカンがぶっ壊れた。いかん。

・スマホの防水。充電未遂になりかけたので、ややグレードアップさせたい。

・シュラフの濡れ、、。カバーの性能なのか?

・テルモス新調してもいいかな〜

・リンクスいるのか問題。

よかったとこ。個人。

・軽量化はできてた。以下リストアップ。

 ・シングルアックス(クオーク)。充分。なんなら軽量アックスで良い。

 ・ハーネスケチった。耐えるべし。

 ・下の防寒着削った。なんとかなる。

 ・上もDASではなくマイクロパフ。動き続けてたら大丈夫。

 ・中間はR1だった。良き。着続けられた。

 ・食料もいいくらい。ちょっと多かったかも。

・マットは二重にした。良き。

・厳冬期シュラフ、テンシューあたりは削らなくてよかった。

・今回初投入のBD、ガイドというグローブ。良き良き。

・歩いてなかったけど、ラッセルできた。これは結構体幹とか関係あるらしい。あとスキー時代の貯金。

・初の本格的な雪稜だけど概ねなんとかなった。

よかったこと。隊(主観)。

・(概ね)成功。頂上以外。

・四人いたからなんとかラッセルが回った。えぐすぎ。

・fixのシステム。1人が空荷でリードしてfix張る。三人がfix通過してリードが荷物取りにもどる。それをセカンドビレイしてる間に、後の2人で2p目のリード&ビレイ。このシステムがハマってた。

・団装も必要かつ充分な範囲。

・致命的なミスが無い。細かいところの判断も詰めれていた。

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