ベンロマック

尊師「お前はクライミングが好きか?」

ボク「すぅ、すきに決まってるじゃないですか、この前だって、、」

尊師「どのくらい好きか言ってみい」

ボク「そっ、そりゃぁ、、、」

ボク「指皮があればクライミングに行くし、指皮がなければクライミングには行かない、それくらいには好きですよ!」

尊師「ふむ、ではお主はチャーハンを作るときにラードではなくサラダ油を使うとでもいうのかね?」

ボク「そっ、そんなこと!今にも取れそうなこの左サイドガバカチに比べれば、瑣末な問題に過ぎない!」

天使「やぁやぁやぁ、盛り上がってるところ申し訳ないんだけど、どうやら風が止んで結露が凄いよ」

ボク「まーちゃんごめんね」

ボク「俺が登りたい課題がさぁ〜。みんな俺のこと落とそうとしてくるんだけどぉ〜(当たり前)」

我が大いなるババは言った。家庭を顧みない男はクソだと。29歳最後の日、下地整備で土木工事をしながら気付けば30歳を迎えたあの頃のバイブスはこの男にはとうにない。だが、諦めない男ババは、ど平日ムコナイという最強の必殺技を失った代わりに、華金ムコナイという諸刃の剣を手に入れた。そう、土曜日の午前3時に帰宅しながらも午前6時に愛娘スーちゃんの夜泣きを耐え抜くという千日回峰行にも劣らぬ荒行!

時に人は希望の前に無力である。

未来を濃縮して煮詰めたような大尊師スーちゃんと、ウン十年のタワマンローンという2つの眩い希望を抱えた大なるババは、その希望という名の絶望に打ちひしがれる。

当たり前だ。

希望が見えてしまったら、ムーブが出来てしまえばやるしかない。バラせてしまえば繋げるしかない。ババは、謎のクライミングIQを発揮し、以前はなかった背後の大岩があっても成立するムーブを開発してしまった。そこに希望があれば、その裏には10倍の絶望がある。

時の流れは残酷である。ラキストのソフトボックスが手放せなかった大いなるババは、今ではシケた電子タバコを吸うようになった。いや、子供が生まれたら相場やめるやろ。

岩は逃げないと、どこかの誰かが言ったらしいがそんな事はない。オレの前からはただ幸せが逃げ去り、ハワイアン岩は少しだけ傾いた。下地も多分沢山変化した。最初は傾斜が変わってメチャクチャ悪くなってる筈だと信じ込んでいたけど、ムーブが出来てしまえば案外これくらいかもしれない。最初は不可能視されていた正対での初手取りも、大魔神パクによって考案されたムーブによって可能となった。そしてやはりハヤッシーさんは強かった。

ボク「これがクライミング界の未来か、、それにひきかえこちらは、、」

overflowingで著しい絶望を味わった大いなるババと、幸せを求めて彷徨う怪物ボクは、その未来の眩しさに抗うことができない。控えるは京大ウォール最強のパク魔人と、我らがJの正統継承者Hase=Jun、それらを束あげるのが完登するために生まれてきた男カントである。ババさん、僕らは日陰でシコシコやるしかないようですぜ。

だが大いなるババは諦めない。ベンロマックへのトライを早々に切り上げてタバコをふかしながらストロングゼロ組を観戦していたババも、大魔神パクがトゥフックを使わずに初手を解き明かしたことを知るやイソイソと舞い戻ってきて教えてもらった通りにやったら見事に止まって子供のようにはしゃいでいた。うーんこの。

こうして繋げ体制に入った我々倶楽部ムコナイは、やはり高強度の下部10ムーブをこなした後に訪れる最大核心に苦しむ。産みの苦しみを知らぬ我々にとって、この苦しみはなんとも耐え難い。否、この苦しみこそを悦びとす!耐え難きを耐え、忍び難きを忍のだ!我ら倶楽部ムコナイ、永遠なれ!

オレの中のヤーレンズ楢原「でもさぁ〜。下部だけでこんなにしんどいのに、もしラストに核心来たらどうするのよ。」

オレの中のヤーレンズ出井「大丈夫でしょ」

結果↓

うわーーーー!

落とされた。当然わかってたんだけど落とされた。10を超えるムーブをこなした後に最大核心がやってくるってことは、つまり良い課題ってことだ!武庫川、おもろすぎる。

因みに苦しみを知ったババは、ラストのアンダーを刺してから4回くらい落ちてた。ババが、ババをしている。

世界で一番面白いボク「お前がクライミングをしている時、俺は、既に登っている。お前が完登の歓びを知った時、俺は、愛を知る。」

とある金曜日に2人とも惜しいトライを連発するも決めきれず、ムカついて禁断のど平日ナイトを決行。

したものの俺は体の調子が最悪で、アップから思うように体が動かず、バラシですら核心のランジが止まらない。

動かない体を何とか叩き起こして一便繋げると、散々練習したのである程度惜しいところまでは行く。でも体のだるさが取れんなーとか思いながら2便目を出したらスルスルと下部の10手をこなし、気付いたらランジが止まってそのまま登れた。

キツネにつままれたようであり、実感が湧かない。動画を見返したらちゃんとスタートからやってたのでどうやら完登したらしい。多分Day6くらい。

ボク「そっ、そんな、無情です!僕らにも生活というものg…」

クライミング界のタカイチ「登りなさい!馬車馬のように登るのです!もう貴方にはクライミング-ライフ-バランスなどいう言葉は存在しませんわ!クライミング-クライミング-クライミングです。登って登って登りまくるのです!」

かわいそうなババ「しかしワシには娘g…」

クライミング界のタカイチ「バカをおっしゃい!クライミングと育児を両立させようなんてアホや!」

愛娘スーちゃんのイヤイヤ期を真っ向から受け止める偉大なるババは、もう今までのババではない。overflowingの初段パートで無限に落ち続けたあの日のババはもういない。ラストトライと言いつつ下部で何度か落ち、ヨレが回って流石にダメかという空気が流れる中、真のラストトライでババはアンダーにエクスカリバー右手をブッ刺した。あまりに劇的すぎて肘くらいまで刺さってるんかと思った・・・・・・・・・・・・・・・・・。落ち続けた最後は直前に閃いて変更したムーブで突破。決め切るなんて、らしくないですね。

見事にアンダーを刺し切ったババ

ボク「ふっ、ふざけるな!俺は500年以上生きた経験豊富なクライマーだぞ!」

??「そうか。お前の前に立つのは、、、」

??「1000年以上生きた大クライマーだ!」

ボク「がーーん」

天使(そんなアホな)

◇◇◇◆◇◇◇

ベンロマックですが、ムーブ解析に相当な労力を費やしたことと、その過程がとても面白かったことから、動画の公開をしばし躊躇いましたが、尊大なる自意識が余裕で勝利して即あげました。オレはカッコいいクライマーになれない。

グレードですが、発表時は五段、その後下地が埋まって一時的に登れなくなったものの、ホールド等はおそらくそこまで変化はなく(傾斜は少し変わっているかも)、右に出ていくところに大きな岩が鎮座しているので、大きく振られるムーブは出来ないものの、オリジナルとあまり変わらない形でトライできるかと思います。

内容は非常に面白く、このグレード感にしては奇跡的なほどどの体格でも苦しいと思います。いや狭いんだよホントに。

一部の人達から三段くらいという声はあるものの、V11〜12のどこか、三段+から四段くらいなのではないかと思いますが、高グレードの経験が乏しく、ハッキリと分からないので、今後リピートされる事が期待されます!

因みに僕の体感はV12でいいんじゃないかというところです。

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